英語にout of the box という表現があります。直訳すれば「箱の外」ですが、そこから転じて「型にとらわれない」「自由な発想で」といった意味でも使われます。
例えば、売上不振で何か打開策をうたなければならないとき、スタッフで集まってブレインストーミングをする。そういうとき決まってBossが“Let’s think out of the box”「既成の枠にとらわれず自由に考えてアイデアをだそう!」と皆に声をかけます。
さて、自分が初めてout of the boxだなぁと感じたのは大学で物理学の講義を受けていたとき。教授がこんなことを言ったのです。「もしかしたら、万物は同じスピードで膨張しているかもしれない。でも、それを認識できるのは宇宙の外にいる者だけである。」
たしかにその通り。自分を取り囲むすべてのモノが1日で2倍の大きさになっていたとしても、自分自身も2倍になっているので自覚できません。
ところで、先週木曜日の朝刊に「CO₂豪の海底に貯留」という記事が載っていました。人間が排出し地球温暖化などの原因となっている二酸化炭素を、海底の地層に閉じ込めてしまうという壮大なプロジェクト。
2030年頃の稼働を目指して三菱商事と三井物産が取り組みをはじめるそうですが、これもout of the boxの賜物かも…と思いきや、その上を行く発想に遭遇しました。
「マルクス・ガブリエル危機の時代を語る(NHK出版新書)」を読んでいたら、クリスチャン・マスビアウ(作家)とマルクス・ガブリエル(哲学者)の対談の中で、認識の概念について二人のこんなやり取り(以下、抜粋)があったのです。
(ガブリエル)AIが人間によってではなく、宇宙人によって設計されたものだと想像してみてください。宇宙人は地球上で何が起きているのか全く知りません。ですから彼らは人間と机がちがうということさえわからない…。
(マスビアウ)宇宙人たちは、地球を支配しているのは自動車だと思い込むかもしれませんね。私たちは車のためにあらゆるお金を費やしたり、車を大事に扱ったり、洗車したりするからです。すべての国の真の支配者は車だということになります。
(ガブリエル)あるいは植物についてもそう認識するでしょう。植物は二酸化炭素が必要だから、人間にそれを排出してもらうべく、実は植物が人間に対して、車に乗るように強いているという見方もできるかもしれません。
植物たちはあのCO₂の海底貯留プロジェクトをどんなふうに評価するのか?見解が聞いてみたくなりました。