かつての職場で会社業績が振るわない時分によく話題になったのが「ヒット商品が出ない」ということでした。
気の置けない仲間同士で新橋のガード下に飲みに行くと、まずは会社の経営陣や上司に対する批判や愚痴に始まるのですが、そのうち決まって商品への不満が出てくるのです。
海外営業部門でしたから、数字を背負っているわけで、どうしても飲み会の席では不振の原因を営業以外のところに求めてしまいます。
「ヒット商品」が出ますと飲み会の雰囲気は一変します。不振の原因探しをした時の裏返し、今度は好調の原因探しで盛り上がるのですが、そうなりますと我田引水のオンパレード。
我々の営業努力でここまで売上が伸びた!と声高に叫ぶばかりで、商品企画や開発、マーケティング部門の努力はあまり話題になりません。
面白いと思うのは、商品がヒットすると、自画自賛の営業部門以外でも、その商品の企画や開発に携わったという人が社内に次々と現れることです。
「あの商品は、俺が企画した」とか「プロモーションは私が全部立案した」とか「僕が最終的に提案書にまとめて役員会で提案した」とか。そんなつぶやきを頻繁に耳にするようになります。
売れなかった商品と売れた商品では投入される人数が違うのか?と思ってしまうくらいです。でも、実際にはそんなことはあり得ません。売れない商品を開発しようと思っている人は一人もいませんから。
そういえば、某お笑い芸人さんが「売れ出したら、急に親戚が増えた」と言っていましたが、商品も同じですね。売れ出したら急にその商品の関係者が増えたといったところでしょう。
ヒット商品というのは消費者がそれを「買おう」と群がるものですが、実はその商品を世に送り出した会社の社員たちも「勝ち馬に乗ろう」と群がってしまう。いずれにしても、人を引き付ける力が凄いです。