銀河鉄道の父(門井慶喜 著)

銀河鉄道の父(門井慶喜 著)

宮沢賢治の生涯を、父、宮沢政次郎の視点で描いた物語である。明治の父としては進歩的で新しい父親像を生きた政次郎。家族一人ひとりへ惜しみなく愛情を注ぐ姿に胸を打たれた。

この父、この家族あっての「宮沢賢治」であり、「風の又三郎」であり「雨ニモマケズ…」なのだと得心が行った。

本著は映画化され、先月から公開中だったので気になっていた折、娘から「○○先生が『最近読んだ本の中で一番面白かった』と言っていた」と聞いて手に取った次第である。

実は読み終えた同じ日に、映画も観た。公開終了間近ということで、そうせざるを得なかった部分もあるのだが…これは失敗だった。

役所広司や菅田将暉など錚々たるキャスティングで素晴らしい作品。しかし、原作を読み終えたばかりで細部の記憶も新しい私は、原作と映像との差異ばかりが気になってしまう。

あの場面がはしょられているとか、これでは説明が足りないのでは等々、そんなことばかりに気を取られ、映像作品として(いわば別物として)楽しむことが出来なかったのだ。

「読んでから観るか、観てから読むか」という順序よりも大切なのは、読と観のあいだに十分な時間をとることだと学んだ。