私たちの世代では、中学校から英語学習が始まりました。最初のうちは簡単です。たしか、グリーン先生と生徒のトムやメアリーとのダイアログだったでしょうか。
出てくる単語もPenやDeskなら日本語になっていますし、BoyとGirlくらいは知っています。SonもSunに似て少し紛らわしいけれど大丈夫。
しかし、Daughterの登場で少し雲行きが怪しくなります。綴りがむずかしいうえに、どう発音するのか見当もつきません…。こうして、馴染みのない単語との遭遇が増えるにつれて、気が重くなってきます。
綴りや発音にはある程度の法則性があるものの、例外も同じ数だけありそうです。やはり、丸暗記するしかないのでしょうけれど、そもそも暗記というのは、やっていて面白くないので困ります。
「昔の人は辞書を繰り返し読んで頭に叩き込んだ後、そのページを破って食べた」という話を聞かされたことがあります。かと言って、まさか山羊じゃあるまいし、紙を食べるわけにもいきません。
それならば、少しでも「楽しく」できる方法はないかと、当時の私は考えました。そして「英単語の発音と綴りを覚えて意味を知る」ことを「人の顔と名前を覚えて知り合いになる」ことに準えてみようと決めました。
頻繁に会う機会がある人というのは、自然に顔と名前をおぼえます。ですから、英単語も頻繁に触れることで、自然と覚えられるはずだと考えたわけです。
知り合いや友達が増えると毎日が楽しくなるように、知っている英単語が増えると、英語の勉強が楽しく(そして、たぶん楽)になるに違いないと。
そこで、とにかく「出会う機会」、つまり英単語に「触れる機会」を増やそうと意識しました。するとそのうち、教科書で出てきた単語を、TV番組や新聞、街中の看板などで見つけることが多くなります。
今までなら、漫然と見過ごしていた人混みの中に「もしかしら、あいつがいるかも」と、まるで知人を探してみるときのように、少し意識して外の風景を見てみる。そうすると単語がぽつぽつと目に引っかかってくるようになるのですね。
すると今度は「この人どこかでみたことあるなぁ 誰だったかなぁ」と同じような心境で、「この単語どこかでみたことあるなぁ」と気になって調べたくなったり、「こんなところに、この単語が使われていたんだぁ」と新たな発見をしたり。はたまた、洋楽を聴いているときに、あの単語かも!と気になる発音が耳にひっかかり、歌詞を調べてみたり。
どんな方法であれ、語学の学習は、より多く触れた者、より長く続けた者の勝ちではないでしょうか。
ただし、楽しくなければ やっぱり触れようとしないし、続かないもの。暗記のノウハウやメソッドも大切ですが、楽しく学ぶための「気持ちの持ち方」は、もっと大切なことのように思えます。