上級生はみな根が真面目な人たちばかり。また、現職自衛官である指導官もみな誠実な方々で、良きにつけ悪しきにつけ一本筋が通っているという印象でした。
特にルール順守に関しては甘えや妥協は一切ありませんから、私たち1年生はルールを身体で覚えるまで何度も叱責や指導を受けます。
次々と芋ずる式に記憶が蘇ってきますが、どれも今思えば微笑ましい光景に映ります。いくつかご紹介しましょう。
腰を伸ばせ!
行進中に「1学年!姿勢が悪い、腰を伸ばせ!」と大声で怒鳴られました。「背筋を伸ばせ」と言われたことはあったのですが「腰を伸ばせ」と言われたのは生まれて初めて。
皆も、どうやって「腰」をのばしたらよいものかと、かえって身体がこわばってしまい、ますます可笑しな姿勢になりつつ、笑いを必死にこらえながら歩きました。
腰が入ってない!
廊下の掃除をしているときのこと。最後の仕上げはモップがけです。乾いたモップでからぶきをするのです。モップに柄はついていません。
まるでボンボンを持ったチアガールみたいに、モップを両手に持ち、はいつくばって廊下を磨くのです。
すると背後から「腰が入ってない!」という怒鳴り声が。その4年生は私のモップがけの姿勢が気に入らなかったようです。
すぐさま後ろを振り返りましたところ、何が起きたのかわかりませんが、その人の足先から血が数滴廊下に落ちました。足先がサンダルに引っかかって、足の爪が割れたか剝がれたか?
いずれにしても、せっかく磨いた廊下がその人の血液で汚れてしまいました。ばつが悪いこと極まりなく、先輩は「おっ、おう…悪いな、もう一度掃除しといてくれ」と言い捨てて、足早にその場をさって行きました。(つづく)