私は18歳頃まで自衛隊に対して漠然とした嫌悪感のようなものを持っていました。と申しましても、何か確固たる理由があったわけではありません。
そもそも軍隊とか戦争が好きな人はあまりいないでしょうから、自衛隊が嫌いな若者というのも特に珍しい存在ではなかったと思います。
たぶん、家族や近くにいる大人たちの言葉に影響を受けた結果、なんとなく毛嫌いしていたのです。にもかかわらず、私は高校を卒業して防衛大学校を受験・進学しました。
しかし、半年後に自主退学、残る半年で急遽受験勉強して一般大学へ進学することに。つまり高校を卒業して「一浪」した勘定になります。
さて、今回は私にとって最初の「人生の分岐点」となった防衛大学校入学から退学までの半年間について40年ぶりに振り返ってみることにします。
そもそも自衛隊嫌いの私が、なぜ自衛隊幹部を養成するための大学を選んだのか?理由はいくつかあります。
一番の理由は経済的な負担が無いこと。全寮制で4年間の学生生活における衣食住は基本的に全て官費で賄われるのです。
そのうえ、学生ながら身分としては国家公務員ですから給与も支払われる。つまり、お金をもらって一般大学と同等の教育が受けられるのです。
もちろん、(その代償と申しましょうか、義務と申しましょうか)要するに給与に見合う勤めや行動制限が課せられます。
それでも、両親へ経済的負担をかけずに済むというのは、生活に余裕のなかった家庭の息子にとっては非常に大きな魅力でした。
二番目の理由は好奇心。防大には「是非、行ってみたい」とは思わないまでも「行ってみてもよい」とは思っていたからです。
でも、自衛隊嫌いの私がなぜそんなふうに考えていたのでしょうか?(つづく)