英語学者の渡部昇一先生が著書でMoney is a good servant, but a bad master(金は良き召し使い、悪しき主人)という諺を紹介しています。「お金や財産は、賢明に使えば実に良いものだが、お金に使われてはひどいことになる」と。
さて、お金に関するこうした名言や慣用句はたくさんありますが、私が強く確信しているのが「金は天下の回りもの」。これに関する個人的なエピソードがあります。
詳細についてはお話できませんが、端的に申し上げますと、私は勤めていた会社で上層部の失態をカバーするために自腹を切ったことがあるのです。
金額にして当時の自分の月給くらい。会社にとっては僅かな額ですが、なぜか上層部は全ての責任を現場に押し付けて支払いを拒否。
このままでは会社の信用問題にかかわると、重ねて支払いを要請したものの埒が明かず。やむなく個人の責任で支払う決断をしました。
仲間たちからは「そこまでする必要はない」と止められました。一方で、私はこのとき2つのことを考えていました。
(1)こうすることで上層部に目を覚ましてほしい
(2)金は天下の回りもの
会社にとっては少額でも、私にとっては1か月タダ働きすることになるわけですから、けっこうなダメージです。しかし、もし、これが「私が支払うべきでないお金」だと神様が判断するならば、いつかはめぐり巡って必ず私のところに戻ってくると信じていたというのが(2)です。例えば、宝くじに当たるとか…。(1)は今思えば独りよがりで、カッコつけすぎですね。
そして実際に2つのことが起きました。
(1)その後の11か月間に社員の半数が依願退職した
(2)14か月後に自腹を切った額とほぼ同額が戻ってきた
ちなみに(2)は会社が14か月後に返金してくれたのではありません。あのお金が天下をまわりまわって、全く別のかたちで戻ってきたのです。おかげさまで(本音では手痛かった)あの時の出費は無事相殺されました。