仕事でマンションの裏庭を巡回中、扉の上に一羽の大きな鳩の後ろ姿が見えた。それにしてもずいぶん大きな鳩だ。こんなところに止まって何をしているのか。
そういえば住人のご婦人に「エレベーターの近くで鳩の鳴き声がするけど大丈夫かしら」と不安げな表情で話しかけられたのは一週間ほど前だったか。
確かにこの物件で鳥を見かけることはあまりない。鳩のみならず、カラスさえも見かけない。おかげで生ゴミを出す際に「防鳥ネット」が不要ゆえ管理側は助かるが、たまに見かけると逆に一抹の不安が過る。
めずらしく遭遇した大きな鳩。ちょうど私の目の高さくらいに止まっている。追い払うべく歩み寄ってみた。しかし、なぜか飛び立とうとしない。
目と鼻の先まで近寄る。ようやく鳩はおもむろに立ち上がった。すると、なんと、その足元からもう一羽の鳩が現れた。交尾だったのだ。
しかし時すでに遅し。私は「二人の世界」いや「二羽の世界」をぶち壊してしまったのだ。さぞかしご立腹だろう。二羽は体を離して並びたち、その場にしばし佇んだのち、揃って飛び去った。