イノベーションとは 目からうろこのセミナー 

イノベーションとは 目からうろこのセミナー 

これからの時代、より厳しい市場競争を戦ってゆくために、企業はイノベーションを起こさなければならない!新規事業や企業内起業など、新らたなアイデアを生み出し、具現化してゆく努力を!

こうした言説は、ビジネスの世界ではいつも飛び交っています。

技術革新は目まぐるしいスピードで進み、人々のニーズも次々と変わる。企業は、そんな厳しい市場で生き残りをかけて、とにかく新しいものを生み出し、競合との差別化を図りなさいと。

数年前、私はあるセミナーに参加しました。「新規事業を創造するためのイノベーション」といった主旨の題目で、企業の経営幹部向けに開かれたものです。

講師には、ITを駆使し新しい農業をはじめた若手起業家と、有名な実業団ラグビーチームを率いる監督の2人が招かれていました。受講者は200名くらいだったと思います。

まず、講師と受講者の「コントラスト」が非常に面白かった。カジュアルな装いで、楽しげに自分の仕事について語る講師、ダークスーツに身を包み、一言も聞き漏らすまいと真剣な表情でメモを取る中高年男性陣。女性の姿はわずか数名でした。

もちろん、私もダークスーツ組なのですが、この会場全体に広がる見事なコントラスト(講師と聴衆の服装・表情・しぐさ)を俯瞰しながら講師の話を聞いているうちに、「なるほど!」と「腹落ち」したことがあったのです。

それはつまり、こういうことです。講師は(たぶん)イノベーションを起こそうなどとは考えていなかった。自分の好きな事を、あるいは信じることを、少年のように夢中になって取り組んだ。その結果、たまたまイノベーションらしきものがついてきた。

一方の受講者は、(たぶん)自分の好きな事はなかなかやらせてもらえない。組織の一員であるがゆえのさまざまな制約にがんじがらめ。だから、イノベーションなど起こせるはずもなく、とりあえずこうしたセミナーに参加し、上司に報告書を出しておしまいです。

イノベーションを起こすには、それを企図などせず、ただ好きな事を夢中になってやればよいのですね、きっと。

講師が何を話したかは、あまりよく覚えていないのですが、どう話したはよく覚えています。その「情熱あふれる語り口」と「会場に出現した”コントラスト”」が、イノベーション創造の核心を見事に教えてくれました。

これは(たぶん)開催者の意図するところではなかったと思いますが。