今でもときどき思い出す先輩がいます。食品メーカーの研究所で同じグループに所属し、私と机を並べていたAさんです。歳は2つしか違いませんのでほぼ同世代。
面白かったのは、会社や職場の「情報」に対するAさんのスタンスです。
会社にはさまざまな情報が日々飛び交っていますね。人事の話などは定番。確かな情報からうわさ話に至るまで盛りだくさんです。
例えば、隣の部署で問題が起きているらしいとか、来週本社からお偉いさんが出張に来るとか、今度の朝礼で重大な発表があるらしいとか、明日は避難訓練だとか。
自分の仕事に直結する情報もたくさんあります。この企画に〇〇部長が難色を示しているとか、費用を〇%カットする指示が出たとか、納期が3日早まったとか。
そのAさんですが、彼は自分の仕事に直結する情報以外は一切関心を示さない人でした。雑談の中で、そういう話題になると、いつの間にか姿を消してしまう。
基本的に仕事は出来る人でした。だからといって仕事一筋の超真面目なタイプではありません。なんとも掴みどころのない感じですが、私にとっては「ちょっと面白くて、カッコいい」先輩でした。
さて、当時の私の「情報」に対する姿勢はAさんの真逆。新人ということもあったので、できるだけ情報を集めようとしていました。うわさ話でもなんでも、とにかく一旦集めていたと思います。
Aさんは「いらんことを聞くと、いらんことを考えるからなぁ。だから俺、聞きたくないんだゎ」とニコニコしながら話してくれたことがあります。なるほど、それも一理ありますね。
しかしながら、実はAさん、「それは知りませんでした」とか「聞いていなかった」といったことで時々仕事に若干の支障をきたしていました。
きっと情報を過度に遮断してしまったためではないかなぁと当時の私は思いましたし、たぶんそれは事実でしょう。やがて、Aさんは工場へ転勤に。
一口に「情報」といっても、玉石混合。仕事に直結したり、活かせたりするものもありますが、取るに足りないものも多い。
「(情報)収集」などといっても、結局、他部署の不幸を探しているだけだったり、自分のことを棚上げして会社を批判しているだけだったりといった場合も少なくありません。
Aさんのようなスタンスが貫ければ、それは本当に理想的です。しかし、組織の中で仕事を進めてゆくためには、やはり「知らぬが仏 聞かぬが花」というわけには…。情報との「距離感」を自分でうまくとってゆくことが大切なのだと思います。