本書はZ世代の娘からの推薦図書。そうでなければ、私が自ら進んで手に取ることはなかった作品だろう。実は読破できるかどうか不安だったのだが、一気に読み終えてしまった。
最近のテレビドラマでも定番だが、「伏線」が散りばめられ、最後に「回収」されるエンターテインメントなのである。これでは「かっぱえびせん」のように「やめられないとまらない」。
若い世代はもちろんだが、私のようにかつて若かった世代でも楽しめるのは、「交換日記」という昭和の香り漂うコミュニケーションツールを基調にストーリーが展開するからかも。
ただ、本著の面白さはそうした要素だけには留まらない。登場人物たちが紡ぎ出す「交換日記」の「ことば」ひとつひとつに、著者が込めたであろうエネルギーを感じた。
お互いに面と向かって言えないことでも文章にすることで言えるとか、伝わるといった、いわば「書くことの尊さ」を改めて考えさせられた一冊だ。(中央公論新社)