外山先生といえば有名な著作が「思考の整理学」。私も十年以上前、書店の文庫本に巻かれた「東大・京大でいちばん読まれた本」の帯に釣られて思わず買ってしまいました。
最近は東大・京大だけではなく、全国の大学生にいちばん読まれた本になったという帯が付いていましたから、若者に強く支持され続けているのでしょう。
さて、今回ひょんなことから久しぶりに先生のエッセイを読ませていただきました。歳のせいかタイトルにある「忘却」の文字に惹かれまして…。
知識偏重の昨今、人々は知識メタボになり、若き日に持ち合わせていた創造性が失われてゆくという不健康な状態である。
メタボ解消には運動が必要なのと同じで、知識メタボを解消し頭を健やかにするためには忘却が必要なのだ、と先生は説きます。
独特の視点で物事に鋭く切り込み、(個人的には少し強引ではと思うところが無きしもあらずですが)わかりやすい文体で一刀両断する。ゆえに、爽やかな読後感を味わえる、そんな一冊です。(みすず書房)