自助論(サミュエル・スマイルズ 著)

自助論(サミュエル・スマイルズ 著)

これは私の本棚に残っている最も古い文庫本の一つです。これまで海外転勤に伴う引っ越しを5回したのですが、その度に本を処分せざるを得ませんでした。本は手元に置いておきたい性分なのですが、やはり重いし場所もとりますので。

それに、海外の場合、日本の書籍は貴重ですから、知人に譲る、日本人会に寄付する、古本屋に売るなどして出来るだけ現地においていくようにしました。

そうしたハードルをくぐりぬけてきた「自助論」。その出会いはたぶん20年以上前だったかと。まだまだ若輩者の私にとっては、その後の人生の素晴らしき羅針盤になった一冊です。

読んだのは竹内均先生の翻訳ですが、原著は1858年の出版と書かれていますので、いまから150年以上も前に書かれたというわけです。

驚いたことに、あの有名な「西国立志編」はこの「自助論」の中村正直による翻訳だったのですね。私は自分が「西国立志編」と同じものを読んでいることを後から知りました。

第1章は「自助の精神」──人生は自分の手でしか開けない!からはじまって、第10章人間の器量──人格は一生通用する唯一の宝だ!まで。目次だけでも、心が奮い立つような言葉にあふれています。

この本が書かれた当時のイギリスは国家として隆盛を極めていたそうですが、それを支えているのは「自助の精神をもったイギリス国民だった」と冒頭に書かれています。

菅前総理が政策理念として「自助・共助・公助」を掲げていましたが、私はこの点については大いに共感しました。何でもかんでも他人任せでは、結局社会は全体としてよくならないでしょう。

ましてや自分の人生は自分で切り開くよりほかに方法がありません。この本は そのことを、先人たちの豊富な実例をひいて諭してくれます。

では、この本を読んで感銘をうけた私自身は、いったいどこまでこの自助を実践できたでしょうか。なんとも心許ない限りではありますが、少なくとも自助を常に意識する姿勢は持ち続けることができました。

若いうちにこの本に巡り合えて本当によかったと改めて思います。おかげで進むべき方向を見誤らず、後悔なき人生をここまで歩んで来ることができましたので。(三笠書房)