マンション管理人さんに学ぶ

マンション管理人さんに学ぶ

かつては「庭つき一戸建て」というのが住まいの理想像とされていたようなところがあります。もちろん今も、夢のマイホームといえば、そうした戸建てをイメージする人も多いでしょう。

では、マンションは戸建てに劣るかと言えば、そんなことはありません。マンションならではのメリットもたくさんあります。その一つがゴミ出しです。

管理組合の規定にもよりますが、多くの場合24時間いつでも出せるのでは。私の住んでいるマンションもいつでもOKで、とても助かっています。

さて、ゴミに関していつも気になるのは、出し方のルールを守らない住人が少なからずいることです。分別していなかったり、段ボールを折りたたまなかったり、粗大ごみを放置したり。こうした「管理人さん泣かせの住人」というのはまことに嘆かわしい。

初代の管理人さんはAさん。彼女はルール違反を撲滅すべく、ゴミ置き場に注意喚起の貼り紙をしていました。

最初は「ルールを守りましょう」くらいの簡単なものだったのですが、「段ボールは折りたたんで出してください」「ビニール傘は不燃物です」「缶はつぶして入れましょう」…。徐々に具体化し、枚数も増えてゆきました。

3年くらい経過したでしょうか、ついにゴミ置き場はAさんの作った貼り紙だらけになりました。しかしながら、改善にはいまひとつ繋がっていなかったように思います。

それに、この貼り紙自体が、ゴミ置き場をより雑然とした感じにしている。Aさんはとても真面目でいい人なのですが…。

やがてAさんは退職、2代目Bさんが着任しました。彼はAさんとは真逆のアプローチ。貼り紙はすべて撤去され、必要最低限の掲示のみになりました。

それからは、ゴミ置き場が以前より整然としていることが多くなり、ルールやマナーに反するゴミ出しもずいぶん減ったように思います。

そんなある日、私はBさんに「ゴミ置き場が、以前にくらべてずいぶんキレイになりました。いつもありがとうございます」と申し上げると、とても喜んでくれまして、しばし立ち話に。

半ば予想通りだったのですが、Bさんは、貼り紙をする代わりに、まずは自分が行動して、ゴミ置き場をクリーンに保つよう努めていたそうです。

つまり、そのまま出された段ボールは、Bさんが黙って折りたたみ、可燃物と不燃物が混ざっていれば分別し、雑然と置かれたゴミ袋は、整然と並べかえてくれていたのです。

そのおかげでゴミ置き場は常にキレイ。なので、そこを汚すことには、どんな人間でも罪悪感を覚えます。

道端がゴミだらけなら、そこに空き缶をポイと捨てるのは抵抗がありません。しかし、もしその道に沿ってきれいな花壇が整えられていて、ゴミは一つも落ちていないとしたらポイ捨てはとてもできないでしょう。

「北風と太陽」という有名なイソップ寓話がありますが、Aさんは北風、Bさんは太陽といったところでしょうか。マンション管理という仕事も実に奥が深いと思いました。