ソウルからシドニーに異動して最初の給料日を間近に控えたある日。総務経理のマネージャーが申し訳なさそうな表情で私のオフィスに入ってきた。「“あなたの”給与のことでお願いがあります」と。
支払いを数日遅らせたいと。他の従業員は通常通り支払うが、私の分まで払ってしまうと資金繰りが厳しいと言う。いきなり先制パンチが飛んできたわけだ。
異動先の豪州会社は海外事業所の中でも屈指の赤字会社。そうした状況を承知の上で火中の栗を拾った身としては“No”と言う選択肢はない。
それにしてもまさか初っ端から遅配に遭うとは思わなかった。後にも先にもあれがわが人生における最初で最後の給与遅配。16年前のほろ苦い思い出だ。