エリック・ホッファー自伝(エリック・ホッファー著)

エリック・ホッファー自伝(エリック・ホッファー著)

アメリカの社会哲学者であり港湾労働者でもあるエリック・ホッファー(1902~1983)の自伝。訳者は中本義彦氏。

社会の最底辺に留まることに拘り、独り学び、読書や思索を続け、ユニークな哲学者として名声を得た彼の生き様を垣間見ることができる。

アメリカンドリームと言えば、ビジネスで成功し大金を手にして社会のトップに登り詰め、上流階級の華やかな暮らしを満喫するといったイメージ。そういう意味では彼の生涯はその対極にあるかもしれない。

しかし、彼が自らの志を見事に成し遂げたという意味では、これも一つのアメリカンドリームと言えそうだ。

「適応しえぬ者たち」の章で語られる「放浪者と開拓者の親縁性」はとても興味深い。

「人間という種においては、他の生物とは対照的に、弱者が生き残るだけでなく、時として強者に勝利する」

「未開の荒野(=アメリカ大陸)へ向かったのは明らかに財をなしていなかった者、つまり破産者や貧民。有能ではあるが、日常の仕事に耐えきれなかった者。飲んだくれ、ギャンブラー…」

「弱者」の「強さ」を確信する同氏の思想が私の心を捉えた。(作品社)