昨年7月の小欄で紹介した『評価と贈与の経済学(内田樹 岡田斗司夫FREEex 著)』を読んで「経済の原点は贈与にある」と学んだ。
「贈与」に始まった人間の原始経済は時代とともに進化し、資本主義の下で効率と成長の飽くなき追求を通じ、めざましい発展を遂げた。
それは今や「行き過ぎ」の様を呈しており、こうした資本主義の暴走が、環境破壊、所得格差の拡大、社会不安や孤独といった深刻な問題を引き起こしている。
本著はそんな経済発展がもたらす危うい社会を変えてゆくために、もういちど原点に戻って考え直すという試みだ。ここで言う「原点」とは、もちろん「贈与」のこと。
「贈与」で始まった経済活動は、貨幣を媒介した「商業的交換」というしくみを創出したわけだが、著者は両者の違いをこう説明する。
「贈与には精神的な交流がともなわれているが、商業的な交換はそれを切り捨てる傾向がある」
商業的な交換では「売り手」と「買い手」に過ぎないが、「贈り手」と「受け手」なら両者には心の触れ合いが生ずるというわけだ。
そのあたりに、私たち人間は何か「忘れ物」をしてきたのかもしれない。(ヘウレーカ)