新聞の書評で本書を知って手に取りました。50歳で「若年性レビー小体型認知症」と診断された著者が綴った2年間の記録です。
ご本人の日記がほぼそのままの形で今年の1月に出版されたもので、タイトルの通り著者の脳内で何が起きたのかが生々しく語られていました。
実は、妻と私が介護に追われていた一時期、「もしかしたら、お父さんはレビー小体型認知症かも?」と話していたことがあります。
認知症状の現れかたに「波」があり、特に記憶に関しては時々正常に戻ったのではと思うくらいしっかり覚えているといったことが何度かあったからです。
本著でも、症状が改善したり悪化したり、ころころ変わる状況が克明に記されています。これはレビー小体型認知症の特徴です。
ちなみに、「認知症」は症状の総称であって病名ではありません。正確には「認知症」を起こす病気としてアルツハイマー病、レビー小体病、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症などがあります。(一般的に最もよく知られているのはアルツハイマー病)
母は典型的なアルツハイマー型。そしてレビー小体型かもと思った父も、他界する1か月くらい前に出た最終診断はアルツハイマー型でした。
私は両親のおかげで、アルツハイマー型については多くの知識と経験を積むことになったわけですが、今回本書に出合い、あまり詳しくは知らなかったレビー小体型についても多くを学ぶことができました。
そもそも、このような日記を執筆できていること自体が、私の知るアルツハイマー型とはずいぶん違うと感じます。「認知症」という言葉でひとくくりには出来ないほどの差異です。
それでも、幻覚、幻聴などに苦しめられながらも、それらを淡々と言語化してきた著者の胆力に驚嘆します。ちなみに、著者は7年後の今も執筆活動を続けているとのことでした。(ちくま文庫)