お庭の狭い幼稚園

お庭の狭い幼稚園

納戸にあった茶封筒、開けてみたら「園児手帳」なるものが入っていました。私の幼稚園時代の通信簿です。生活と指導の記録、出欠、身長や体重などが記載されています。

私は八幡幼稚園の卒園。杉並区善福寺にある昭和29年開園の幼稚園で、井草八幡宮の森に囲まれた素晴らしい環境でした。

しかし、園での生活はあまり楽しくありませんでした。思い出すことといえば、学芸会で王様の役を友達と争って大喧嘩したり、いやいやオルガンを弾かされたりといったことばかり。

出欠記録を見ると、なるほど随分と欠席日数が多い。4歳児のときは年間53日、5歳児になっても29日も休んでいました。

何か楽しかったことは…ようやく一つ思い出しました。それは広い園庭にある小さな「お山」で遊んだこと。

盛り土で小さな山がつくってあり、真ん中が土管のトンネルになっていたと思います。その周りを友達と駆け回るのがとても面白かった。

先般、数十年ぶりに園の近くに行く機会があったので園庭をのぞいてみました。八幡宮の森に囲まれたあの雰囲気はそのままなのですが、驚いたのは園庭の「狭さ」です。「こんなに狭かったのか!」と思わずつぶやいてしまったくらい。

私の記憶の中で、あの園庭はとてつもなく広かったのです。それこそ、お山は教室からかなり遠くに見えていました。

ところが、こうして大人の目でみると園庭もお山もなんと小さく見えることか。記憶とのギャップでより一層小さい印象をうけたのだとは思いますけれど…。

つまり、大人の目には狭く見える園庭でも、園児にとっては十分広い場合があるということです。現に自分が実体験していますので間違いありません。

幼稚園を選ぶときに、園庭の広さは気になるものです。広々とした庭でのびのびと遊ばせてあげたいと思うのが親心。

では、どのくらい広ければよいのか?ついつい大人目線で判断してしまいがちですが、狭いと思うスペースも、子供にとっては十分広い可能性がある。

娘の幼稚園を選ぶ際に、この時の体験が活きました。園の教育方針や安心、安全といったソフト面を重視、園舎や園庭といったハード面はあまりこだわらず、最終的に荻窪駅近くにある「お庭の狭い」園に決めたのです。

この選択は大正解。子供たちは狭ければ狭いなりに工夫して楽しく遊んでいました。充実した園のカリキュラムや情熱あふれる先生方のご指導のおかげで、娘は幼稚園が大好きに。ちなみに彼女の欠席日数は3年間でたったの1日でした。