「会社の仕事は『掛け算』になっているのです。社員ひとり一人が与えられた任務を全うし、それが足し合わされるのではなく、掛け合わされた結果が全体のパフォーマンスになります。ですから、もし一人でも0(ゼロ)の人がいたら、全体の成果は0(ゼロ)です。」
これは私が以前勤めていた会社の社長が、ある親睦会の席で話したことです。とても印象に残っています。全くその通りだと思います。
この話を「掛け算」を前提に、私なりにもう少し発展させていただきますと、
- 全員が1なら全体も1止まり。全員が与えられたことだけをやっても、全体のパフォーマンスは変わらない。
- 全員が1%オーバーアチーブするだけで、100人の組織であれば全体は1.01の百乗で約2.7になる。
- 逆に全員が1%アンダーアチーブで終わると全体は0.99の百乗で約0.37と寂しい結果に終わる。
組織が大きいほどレバレッジが働きますので、この「掛け算」説は特に大企業にはピッタリフィットしますね。
一方、中小企業ではどうでしょう。こちらは、私の経験を踏まえても、やはり「足し算」がしっくり来るような気がします。
- 仮に0の社員がいても、残りの社員がカバーして全体の総和を維持。
- 残念ながら個人の少々の頑張りでは、全体への波及効果は限定的。
- 逆に多少のミスがあっても、その損失はあくまで足し算の範囲内。
それにしても数学的なロジックが組織のパフォーマンスを表象しているところが、なんとも興味深い。言いえて妙ですね。
ところで、掛け算といえば(負の数)x(負の数)=(正の数)になるというのが、なかなか実感として理解できなかった方は多いのではないでしょうか。私も中学校でこのことを習ったとき、なんだかスッキリしませんでした。
でも、実生活に置き換えてみると、例えば「二重否定」は「肯定」ですから、「負x負=正」が表象しているようにも思え、なんとなく「もやもや」は胸の内に収まりました。
しかし、高校に進学すると「虚数」なるものが登場。結局、そこから先の世界には、ついてゆけなくなってしまいました。
最後に「足し算」の例を一つ。会社や部門の統合などでよく、双方の相乗効果で1+1=3になる可能性がある!などと言うことがありますね。やはり(「虚数」ではなく)「実数」はわかり易くて有り難い。