馬に乗る

馬に乗る

ドイツに駐在時代に乗馬を体験しました。乗馬といえば日本ではお金持ちの趣味というイメージがありますが、ドイツはもちろん、ヨーロッパではもっとずっと身近なスポーツです。

友人が「毎週土曜の決まった時刻にふらっと行けば、その場ですぐに乗せてくれますよ。予約も不要で1時間レッスンを受けたらその場でお金を払っておしまい」というお手軽な乗馬教室を紹介してくれたのです。

職場でも乗馬をはじめた話をしたら、「それはいいね!ところで、ウチの経理マネジャーは学生時代に馬術で素晴らしい成績を残したのですよ」と副社長が教えてくれました。

「へぇー、それは意外ですね。驚きました。こんど教えてもらいたいなぁ。それで、彼は今も馬に乗っているのですか?」と尋ねたところ、「それは無理ですよ。馬が可哀そうでしょ」と副社長。

それもそうですね、彼は推定体重120kgの巨漢です。仕事はものすごく出来るとても優秀なスタッフなのですが、大好きなコカ・コーラとチョコレートのせいで馬に乗れない体に。

さて、その乗馬教室ですが私はほぼ毎週末、妻や紹介してくれた友人夫婦、時には日本から観光で訪れた知人などを伴って乗りに行きました。

実際やってみるととても難しい。先生は年配の男性なのですが全てドイツ語、しかも訛りが強くて何を言っているのかさっぱり理解できず…。それに、いつも同じ馬に乗るわけではないので馬との相性もかなり影響します。

それでもなんとか先生の教えを推測しながら練習を重ね、運よく相性のよい馬に当たると少しだけギャロップができるくらいのレベルにはなりました。

そして夏休み。休暇でドイツの北部にあるズルトという島に遊びにいったのですが、そこで観光客向けに1時間ほどトレッキングをさせてくれる牧場がありました。

自分たちのような初心者が参加しても大丈夫だろうか?一抹の不安はありましたが、妻と二人で思い切ってチャレンジ。

ところが、驚いたことに跨って数分、不思議なほど自分の意思が馬には伝わっているのがわかりました。妻も全く同じ感触を得ているようです。

何の問題もなくスムーズにトレッキング開始。ふだんは手こずるギャロップも、合図を出せばまるで機械のスイッチをオンにするかのように軽快に走りだしてくれるではありませんか!

海岸や小高い丘をのんびり歩いたり快走したり、それはもう最高の気分を味わうことができたのです。あの乗馬教室で出来なかったことが、なぜここではいとも簡単にできるのか?

私たちの出した結論は単純明快。馬の調教レベルが違うということです。「下手の道具調べ」と言いますが、乗馬の世界では、下手でも道具はしっかり調べたほうが良いみたいです。